私が電書バトから漫画を電子書籍として配信するまで(2023年11月版)

===更新履歴===
2023/11/17 全体的に文章を微修正、英語版出版のリンク追加
2023/6/21(7.補足を改題して 電書バトでの出版に向いてる人はこんな人 に変更、文章を追加、その他配信先の数を70→60に変更)
この記事の初出:2022/12/02(旧ブログ)
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過去何度か改訂して書き続けている「描いた漫画を電子書籍として商業ルートで広く販売する方法」です。
私(高岡あまね)の場合は電書バトという出版取次会社にお願いしています。

電書バト

今回自分で描いた漫画を電書バトで配信する流れを書いておきます。
誰かの参考になれば嬉しいです。


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近年、形式を整えられれば個人でも電子書籍を販売することが出来るようになってきました。ですが個人の力で出せる電子書籍販売サイトは、2020年5月現在、わずか数か所(Amazonkindle、楽天kobo、ブックウォーカーなど)にとどまっており、それから3年経った2023年でも状況はあまり変わっていません。

もっと多くの販売サイトで自分の電子書籍を販売したい…。

そんな時に頼りになるのが電子書籍の「出版代行(配信代行)」をしてくれるサービスです。
出版代行会社を介すことによって、(会社によってまちまちですが)最大約150の配信サイトで作品を公開することが出来るようになります。2023年5月現在、漫画向けには電書バトやナンバーナイン、コンパスなどの出版代行会社があります。

私はその中から電書バトという出版代行サービスを選び、自分で描いた漫画を電子書籍として販売しています。そこまでに至った経緯や、電書バトでの出版の流れなどを書いていこうと思います。


===目次===

  1. 原稿を用意する
  2. 代行会社を比較する
  3. 作品の審査を受ける
  4. 配信データ・書誌情報を作成する
  5. 配信開始
  6. 配信後の反応など
  7. 電書バトでの出版に向いてる人はこんな人
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1.原稿を用意する


『ただいま。』というライトBL漫画が単行本1冊分程度のページ数描きあがったので、個人でkindleやkoboにて販売していたのですが、これをもっと多くの人に読んで貰いたいと思い行動に出ました。
book_ta_001.jpg
『ただいま。』(kindleのページ)



2.代行会社を比較する


先に上げた配信代行会社のうち数社を比較しました。
私の場合は、どこで出したら一番儲かるかというよりは「どの会社なら私の個人情報を預けてもいいと思えるか」という観点で選びました。そこで一番気になったのが電書バトです。

電書バトは、『ブラックジャックによろしく』の佐藤秀峰先生の会社です。
漫画を描いて色々な苦労をされたことがある先生が代表を務めている会社なので、私の中での信頼度が、当時比較した会社の中では一番高い所でした。著名な方も沢山ここで出版されているので経営的にも安定しているだろうという判断です。ここで出せたらラッキー。第一候補でした。
配信先は国内配信60社、海外配信会社11社。配信手数料は20%から。



3.作品の審査を受ける


電書バトで本を出したいときは、まずサイトの問い合わせから「御社で本出したいです」という旨のメールを出します。問い合わせはペンネームで大丈夫です。いきなり本名明かさなくてOKです。

すると担当の方から「利用規約了承した?じゃあ作品を審査するから作品データ送ってね」という旨を言われますのでデータを送付します。私は気合を入れて作品データ全頁を送付しました。これに合格すると次のステップに進むことになります。
夏休みや年末年始など挟まなければ1週間程度で返事があるかと思います。

作品の審査については、電書バトのホームページに基準の記載があります。
作品に関して、商品としてのクオリティを審査いたします。
「校正がなされているか」「イラストが未完成な状態ではないか」「データサイズ、解像度が十分に足りているか」「各ストアの販売基準を満たしているか」などの審査を行います。
作品の内容については、審査いたしません。アダルト作品も大歓迎です。
(電書バトホームページ(審査について)より引用)




4.配信データ・書誌情報を作成する


電書バトでは、基本的には表紙デザインから校正から何から何まで全て自分で整えることになります。
まず決められた配信用の原稿サイズを整えます。作品データを1枚1枚、1414×2000pxの72dpi、jpg形式に変換します。

電書バトに対応した原稿を整えるために参考になるページのリンクを貼っておきます。
佐藤秀峰先生のnoteです。
その他、決められた書式で書誌情報を入力し提出します。自身の振込先や販売価格などを入力していきます。販売価格も勿論自分で決められます。どの位なら他の作品と勝負できるか、悩みながら付けるのが醍醐味です。

各サイトに載っている作品のあらすじも、作者が自分で書きます。
『ただいま。』の場合はこんな感じの紹介文が載っているのですが…
おいしいって言ってくれる人がいるだけで、こんなに嬉しいんだなって…」
料理が得意な成田章平は、会社の先輩である山口漣に懐かれてお弁当を作ることになり…?
ごはんがキッカケで始まる先輩×後輩ストーリー。
読むと卵焼きが食べたくなる、ほっこりほのぼのBL。

これも私が頭を捻って考えました。
ちなみに、基本的には提出した作品データはストアに配信後は修正出来ないようなので、ミスが無いか念入りに確認することをお勧めします。



5.配信開始


作品データ、書誌情報を提出すればあとは配信を待つのみです。以前はRenta!先行配信でその他媒体は1ヵ月遅れでの配信でしたが、2022年9月よりデータ送付から約1~1.5か月で一斉配信になりました。
その後、2023年10月頃からはkindleUnlimitedのみ一斉配信から1か月遅れでの配信という形に変更となりました。



6.配信後の反応など

今回配信した『ただいま。』は、それまでも特定の投稿サイトで沢山の方に読んでいただいていた作品だったのですが、電書バトを利用することでより多くの方に読んでいただくことに成功したと思っています。
発売の翌月に電書バト作品の大規模セールがあったのもあり、一時期ブック放題でBLランキング2位とかAmazonkindleのBL売れ筋ランキングで100位以内とかにいました。どうもありがとうございます。

電書バトでは、売上は凡そ半年後に入ります。2か月に1回、1万円以上売上があった場合のみ振り込みがある仕組みです。(『ただいま。』の売上の売上報告書が来たとき、「ランキング入った割りには思ったより少ねぇ」って思ったのはナイショですが)電書バト効果を実感している次第です。
頂いた金額は、私ひとりの力では辿り着けない額でした。ありがたく今後の作品資料代などに充てていく所存です!おかげさまで資料集いっぱい買えそうです!作画の勉強もしたいです!

…というわけで私はこんな感じで電書バトで電子書籍を出版しました。
電書バトで出すとこんな感じなんだ~へぇ~と思っていただけたら幸いです。



7.電書バトでの出版に向いてる人はこんな人


他社と比べて電書バトは「何でも自分で出来る人向け」かと思いました。
校正も、表紙のデザインも、奥付も何もかも自分でやります。他社はこの辺は大体料金内でやってくれるのですが、電書バトの場合はオプションになり要問合せとなっています。
(時々電書バトの本で、表紙に電書バトの鳩マークが付いてるものを見かけるのですが、それらの本はこのオプションを使っているのではないかと思います。)

私は元々Amazonkindleや楽天koboで個人出版していたのであまり気負わず出来ましたが、この辺が苦手だなーと思った方は、他社で出版する、もしくは、表紙のデザインや装丁などであれば専門の人にお願いしてデータを整えてから出版する方がいいかもしれません。

また、あくまで私の場合ですが、配信先が沢山あっても読まれるのは大手配信先のうちのごく一部でした。
なので、あまり配信会社の配信数には拘らなくていいと思います。大手がカバー出来ていればOKかと!

あと、配信代行会社を利用する際の最大のメリットは、複数サイトに配信しつつもkindleアンリミテッドにも配信できる所だと思います。
個人出版でKindleでも出してkoboでも出したいな~…と調べているときにぶち当たるのがこのアンリミテッドの壁だと思っているのですが、大方の配信代行会社はこの壁を乗り越えてくれていますので、安心して配信をお願いしてください。


(2023.6.21追記)
私見です。電書バトは、会社としてメディアミックスの推進を売りにしていないと思います。
これは多分ですが、鳩マークが付いた本の奥付に一律に書いてある、佐藤秀峰先生の言葉がヒントになると思っています。
以下引用(原文ママ)
高度にビジネス化された商業出版においては、しばしば作品の芸術性や作家性が犠牲となります。
作品の価値は売り上げだけで判断できるものではありません。また、次々に新作が生み出され続ける現在の出版状況においては、多くの名作がその海に埋没しています。
漫画表現全体の懐を広げながら、既存の商業出版にはない価値を提出することが電書バトの使命です。作家が主体となった作品作りに貢献し、読者へ貢献することが我々の使命です。



…以上、私が電書バトから漫画を電子書籍として配信するまで(2023年版)でした。
最後までお読みいただきありがとうございました!


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『ただいま。』以降、なんやかんやで計6冊電子書籍を出しました。色々知見もたまってきたので、また何か記事を書きたいと思っています。次は多分英語版の話かな。気が向いた時にUPします
UPしました→自作の漫画を英訳して出版する